映像収録の一度目をテイク1といいます。テイクは常に2個以上撮ることを心がけてください。人物を撮る時は特にそうです。最初のテイクは、演じる側も緊張しています。表情が硬かったり力が入りすぎていたり。だから、よりよい変化を期待して、たとえば「もっと声を大きく、できるだけ笑顔で」とか「さっきよりクールにお願いします」といったように具体的な指示を出します。指示こそが演出でありディレクターの仕事です。的確な指示は、映像のクオリティを飛躍的に向上させます。
テイク2を撮っておくメリットは、後で比較して選ぶことができる点です。また、撮影時に気が付かなかったノイズにも対応できます。その部分だけ編集で差し替えることが可能だからです。
ところで、テイクはたくさんあればいいというワケではありません。人が集中できる時間には限りがあるからです。私の経験ですが、有名な俳優さんの中には、テイク1しか撮らせないという方がいました。しっかり練習してきたし、一度目に全力投球しているというのです。それも一理あります。運動会の徒競走や一度きりのパフォーマンス、アドリブなど、テイク1しかない状況もたくさんあります。
それでもなお、テイク2を撮るぞという執念がディレクターには必要なのです。
このコラムは、湘南地域密着インフォメーションマガジン「フジマニ」に連載していました(2014年)連載をリニューアルしてホームページで公開(2018年)しています。※本コラムのシェアやリンクはご自由にどうぞ。でも、転載や転用はお断りします。